なんとなく心がざわつく時、ありませんか?
何かが引っかかってるけど、それが何かわからない
気づくとため息をついている
「大丈夫」って言ってるけど、実は大丈夫じゃない気がする…
そんな「言葉にできない心のざわざわ」を抱えたまま過ごしていませんか?
忙しい日々の中では、つい気持ちにフタをしてしまいがち。
でも、そんな時こそ立ち止まって、「今、わたしはどんな感じがするんだろう?」と心に目を向けてみることが、とても大切です。
その“内なる声”に耳をすませる方法が、心理学者ユージン・ジェンドリンが開発した「フォーカシング」です。
ユージン・ジェンドリンとは?
Eugene T. Gendlin(1926–2017)
アメリカの哲学者・心理学者。
「フォーカシング」の創始者として世界的に知られています。
生い立ち
1926年、オーストリア・ウィーン生まれ
ユダヤ系としてナチスから逃れ、1938年にアメリカへ亡命
哲学と心理学を学び、シカゴ大学で博士号を取得
ロジャーズとの出会い
カール・ロジャーズ(来談者中心療法の創始者)と共に研究
セラピーの録音を分析し、「フェルトセンス」という概念にたどり着く
→ 言葉になる前の身体感覚に気づくことが、変化の鍵であると発見
フォーカシングの開発
1960年代に「フォーカシング」を理論化
1978年に著書『Focusing』を出版し世界的に広まる
誰でも使えるセルフケアの方法として、心理療法や日常生活に活用されている
主な功績
フォーカシング研究所(現:国際フォーカシング研究所)を設立
心理学だけでなく、教育・創造性・スピリチュアリティなど広い分野に影響
フォーカシングってどんなもの?
フォーカシングとは、アメリカの心理学者ユージン・ジェンドリンが開発した、心理療法の一つです。
彼は、来談者中心療法(クライエント中心療法)を創始したカール・ロジャーズと共に、カウンセリングの効果を研究していました。
その研究の中でジェンドリンは、効果的なカウンセリングを受けている人たちにはある共通点があることに気づきました。
それは、
「話すときに言葉を選びながら、身体の感覚を確かめるように話している」
という姿勢。
つまり、自分の中の“まだ言葉になっていない感覚”を探るように語る人ほど、心が癒されていくというのです。
ジェンドリンはこの感覚を「フェルトセンス(felt sense)」と名づけ、これを中心にした心理療法をフォーカシングとして体系化しました。
「フェルトセンス」ってどんな感覚?
フェルトセンスとは、一言でいうと「なんとなく身体に感じている心の感覚」です。
お腹の奥が重たいような感じ
胸がぎゅっとつまるような感じ
喉の奥が詰まったような感じ
これらは、はっきりとした痛みや症状ではないけれど、「何かがある」と感じさせる曖昧で微妙な感覚です。
そしてこの感覚こそが、自分の本当の気持ちにアクセスする鍵なのです。
頭で考える前に、身体が先に「気づいている」ことってありますよね。フォーカシングは、その身体の“気づき”を丁寧に受け止めていくプロセスです。
フォーカシングの基本ステップ【3つのプロセス】
フォーカシングは、以下の3つのステップで行います。
1. 自分の内側に意識を向ける
まずは静かな場所で、軽く目を閉じて深呼吸。
そして、自分の身体の内側にそっと注意を向けてみます。
「今、何か気になることがある?」
「最近、引っかかってる感じってない?」
問いかけることで、フェルトセンスがふっと浮かび上がってくることがあります。
2. フェルトセンスと一緒にいる
フェルトセンスが見えてきたら、それをただ“そこにあるもの”として感じてみましょう。
言葉にしようとしなくても大丈夫。ただ、「あるな」「ここにいるな」と認めてあげることが大切です。
「わからないけど、この胸のつかえみたいな感覚…何かある」
「このザワザワ、ちゃんと見てみよう」
否定せず、分析もせず、ただ一緒にいてあげる。それだけでも、心がふっと軽くなることがあります。
3. 言葉やイメージをつけてみる
次に、そのフェルトセンスにぴったりくる言葉やイメージを探してみます。
「モヤモヤ」
「重たい石のような」
「ぎゅっと握られてる感じ」
言葉にすることで、フェルトセンスは少しずつ形を持ち始めます。
そして、「どうしたの?」「何を伝えたいの?」と問いかけることで、内側から答えが返ってくることも。
まるで、心の奥にいた小さな子どもが、やっと話し出してくれるような感覚です。
フェルトセンスと仲良くなる6つのコツ
フォーカシングを深めるには、次の6つの姿勢がとても役立ちます。
1. 感覚にスペースを与える:いろんな気持ちを一度に扱おうとせず、一つ一つ切り分けてあげましょう。
2. 五感を使う:その感覚はどこにある?どんなイメージ?色や形がある?と感じてみる。
3. ぴったりの言葉(ハンドル)を探す:名前をつけると、ぐっと距離が縮まります。
4. ハンドルが合っているか確認する:身体にフィットするかどうかを感じてみる。
5. 友達のように接する:評価せず、優しく一緒にいてあげる。
6. フェルトセンスに問いかけてみる:「この感じは、何を伝えようとしているの?」
見つけにくいタイプの人も大丈夫
フェルトセンスがうまくつかめないという人には、次のような傾向があります。
評論家タイプ:「こんなことして意味あるの?」とすぐ判断してしまう
理屈家タイプ:「なぜ?どうして?」と原因を分析しすぎてしまう
シャイなタイプ:感情を表現することに抵抗がある
でも大丈夫。そんな時は…
静かで安心できる空間を用意する
「なんでも感じていいよ」と、自分をまるごと受け止めてあげる
これだけで、少しずつフェルトセンスにアクセスしやすくなります。
フェルトセンスと向き合う4つの態度
1. 身体の感覚に意識を戻す:思考に偏りそうになったら「今、身体はどう感じてる?」と問い直す。
2. 受け入れる姿勢を持つ:否定せず、変えようとせず、ただ“あるがまま”を感じる。
3. 好奇心を持つ:小さな発見を大切に。「これ、なんだろう?」と興味を持ってみる。
4. 自分の一部として見る:フェルトセンスは“自分そのもの”ではなく“自分の一部分”。だから巻き込まれすぎなくてOK。
まとめ:あなたの「本当の気持ち」に出会うために
フォーカシングは、無理に何かを変えるためのテクニックではありません。
自分の中にある“まだ言葉になっていない感覚”に優しく耳を傾けることで、
自然と気持ちが整理されたり、新しい気づきが生まれたりします。
忙しい日々の中で、「ちょっと心が疲れたな」と思ったら、
ぜひフォーカシングを試してみてください。
あなたの中にいる“小さな声”が、きっと大切な何かを伝えてくれるはずです。


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